超短編ストーリー 第11話 再会
ともに断崖絶壁の上に位置するA地点とB地点。
行き交うには、唯一架かっているその橋を渡るしか方法は無かった。
見るからに古そうで頼りない、その細い橋を…。
ある日の午後、スロースとラクゥは3日ぶりに橋の上で会った。
スロースとラクゥは歳が同じせいか、仲が良かった。
少し橋の上で近況を伝え合い、
「それじゃまたな!」と再会を約束し、お互いの進む向こう側へ行こうとする。
スロースは、ラクゥがあまりこの橋を得意としていない事を知っていた。
自分は動かず、ラクゥに向こう側へ行くよう促したが、ラクゥは案の定、すれ違い様スロースの足に自分の足を引っかけ、転びそうになった。
スロースは咄嗟の判断で腕を伸ばした。危機一髪。
しかしお互い安心したのも束の間、橋は重みで傾き、揺れた。
橋の傾きを戻すには、どちらかが落ちるしかない事を、お互い知っていた。
ラクゥは平然と言った。
「いいよ、手を離して。俺のせいでこうなったんだから」
「何言ってるんだ!諦めるな!」
「いいんだ、でもきっとまたすぐ会えるさ」
どうにか助けようとするスロースだったが、体力が尽きたか、その時は来てしまった。
「ラクゥ!!」
ラクゥは落ちていった…。
4日後、スロースとラクゥは橋の上で再会し、何事も無かったかのように近況を伝え合う。
ラクゥが大怪我はおろか、かすり傷の一つも負っていないのにも拘らず、スロースは驚く様子が全く無かった。
そりゃそうだ。
どんな高い所から落ちたって蟻は死なないのだ。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません