日常幸せストーリー 第4話 カレー屋にて

2020年4月30日日常幸せストーリー,執筆作品

今日の仕事は自分の中では満足のいかない出来だった。

ヘルプ先の店長やスタッフの方たちは
「ありがとうございました。助かりました。またよろしくお願いします!」
なんて言ってくれたが何故か腑に落ちない。何かモヤモヤする。


気晴らしに美味しいものでも食べて帰ろう!

せっかくこの辺りまで来たのだから、途中下車して久しぶりにあそこのカレー屋に行こう!


その店は駅からは離れているが口コミなのかいつも賑わっている、笑顔の素敵なマスターが一人で営むカウンターのみの小さな店。

壁は一面黄色。可愛らしいというか、カレー屋らしいというか。私は好きだ。

店内はほぼ満席でマスターと楽しそうに話している青年の隣の席が空いていたので座った。

席に着くなりその青年が気さくに話し掛けてきた。

「僕、調理師専門学校の学生なんですよ。今日はカレーの勉強で友人とカレー屋巡りをして来たんです。最後にここに辿り着きました。近所だからしょっちゅう来るんですけどね。」


今日は日替わりカレーにした。
注文すると、程なくしてサクサクの白身魚フライが上に載ったボリューム満点のカレーを持って来てくれた。

青年の話を聞きながら食べた。

青年の話はとても面白く店内は笑いが絶えなかった。

いつの間にか、モヤモヤした気分も吹っ飛んでいた。

食後に果実酒を飲むことにした。ここはカレーも美味いけれどマスター手作りの果実酒も美味しい。

「いちご酒を下さい。」

私がオーダーしたのを聞いて青年が羨ましそうに

「あぁ、食べ歩きで結構使ってしまった、果実酒分を残しておくんだった」

小声で呟いているのが聞こえた。

「ご馳走しますよ。お好きなのをどうぞ!」

青年のおかげでモヤモヤが晴れたからお礼にご馳走したいと思った。

「えっ!本当にいいんですか?」

「どうぞ~」

「じゃあ、甘夏みかん酒を」

色鮮やかな赤いグラスとオレンジのグラスがテーブルに置かれる。

ふたりで乾杯した。


帰り際に深々と頭を下げられた。
そして元気に去っていった。

(こちらこそ楽しい時間をありがとう!明日からまたがんばれるよ!)

心の中で呟いて店をあとにした。

ふと空を仰ぐと、さっきの壁の色に似た綺麗な月がうっすらと周りの雲を照らしていた。

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