日常幸せストーリー 第6話 ねぎ増し
ラーメンマニアのK君に教えてもらった煮干しラーメン店へ行った。
薄暗い階段を登っていく入りづらい店で少しドキドキした。
入ってみると体格の良い若い店員さん二人が笑顔で出迎えてくれてホッとした。
そこはカウンター7席の狭くてレトロな空間。
(雰囲気良くて居心地良さそう!)
煮干しのいい香りが店内に漂っている。
朝ということもあり先客は居なくて客は私一人。
ラーメンを待つ間、瓶ビールを飲みながらサービスのメンマチャーシューをつまんで一人飲みの時間を楽しんでいた。
階段を登ってくる音がする。賑やかな話し声がする。どうやらグループのようだ。
「よぉーひさしぶり!」
3人は常連のようだ。一番年上に見える背の高い男性が店員さん達にハイタッチする。
「もぅ~!年上にたかられてるんですよぉ~!?」
「賭けに負けたからねー」
(楽しそうだなぁー。男同士のノリってたまに羨ましくなる)
そんなことを思っていたらラーメンが到着した。
もちもちの太い手もみ麺に煮干しの効いたスープ。
チャーシューは豪快に厚切り二枚。
「今、キャンペーン中でねぎ増しサービスしてるんでサービスしてもいいですか?」
「はい!お願いします!」
気前よく山盛り載ったねぎを別皿で持ってきてくれた。
(美味しそう!)
3人の会話はずっと聞こえている。
「僕は特製。君らはミニチャーシュー丼にしてください」
「ケチだなー、おまえー」
「俺ビール」
「おまえ、まだ飲むの?」
「冗談ですよー。何でもいいですよん!」
「俺ね、普通のラーメンにねぎ増し」
「今、キャンペーン中でねぎ増しサービスですよ」
店員さんは慣れた様子で答える。
「いい店になったねー!いい店になった!」
背の高い男性が大袈裟にリアクションする。
「ありがとうございます。」
店員さん二人が笑いを堪えながら答える。
微笑ましいコントが終わり、やっと3人の注文が決まったところで私もラーメンを食べ終えた。
「ご馳走さまでした!」
「煩くしてすみません!」店員ふたりと客3人が一斉に私に向かって頭を下げた。
私はその様子が可笑しくて笑う。
「でも俺ら面白かったでしょう?」背の高い男性がおどけて言ってきた。
私は笑顔で頷いて店を出た。
店の階段を降りようとする。
階段下でキジトラ猫3匹がこちらを見上げていた。
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