日常幸せストーリー 第7話 シンプル

2020年5月3日日常幸せストーリー,執筆作品

社長からは丁寧さを、先輩からは効率を、日々叩き込まれた。
予想以上にハードで拘束時間も長かったが、私はここで働く人たちが大好きだった。

全てが手作りの、丼一杯にかける情熱。


メンマもチャーシューもスープも営業しながら仕込む。

お客さんがラーメンを食べながら
「それ、チャーシューですか?美味しそうだなぁー」
「手が込んでいるんですねー」
と身を乗り出して覗き込む。

それがひとつのショーになっていて楽しかった。


「無駄な動きが多いんだよな。シンプルに考えれば全てが上手く行くよ」
新人の私はよく先輩から注意された。

「シンプルって何?」

言われていることが理解できなかった。

先輩は身軽な人で、毎日手ぶらで、ジーンズに店のユニホームで出勤して着替えもせずにそのまま帰る。

そして社長も毎日同じ服を着ている。

二人はたまに衝突してこちらがハラハラする程の喧嘩をするが次の日には冗談を言いあって笑っている。二人とも、後に引かないサッパリした性格なのだ。


「ふぅ~。今日も終わった。飲もう!」

先輩はそう言うと店の冷蔵庫の中から缶ビールを取り出し
「はい、お疲れ様」といって私に手渡してくれた。

残り物のメンマ、チャーシュー、味玉でビールを飲る。

「あー、うまい!」

「難しいですよね~!スープって。中々うまく作れなくて」

「複雑に考えるから駄目なんだ!一番大切なのは気持ちなんだ。美味しいものを食べさせたいという気持ち!」

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