日常幸せストーリー 第8話 家賃
勤めていたエステサロンが昨日倒産した。
TVのCMでよく流れる有名な大手エステサロンだ。
「今日で会社はなくなります。明日は店に来ては行けません。」
閉店後、スタッフルームで本社から駆けつけた部長に言われてみんな一斉に泣き出してしまった。
次の朝、TVのニュースで昨日まで勤めていたエステサロンが倒産したことが流れて本当に潰れたんだと実感した。アパートの共同玄関のドアを開けて階段を降りると一階に住む大家さんにバッタリあった。会社が潰れたこと。今月の給料が振り込まれなかったことを伝えた。
「ニュース見たわよ!大変な目に会ったわね。家賃はいつでもいいから。」
そういって買い物に出て行った。
普通の人はしないかも知れないが、私は【さっぱりしたい】と思い駅前の千円カットに駆けこんで
「坊主にしてください。」と頼んだ。
「今時期、寒いですから風邪ひきますよ。」
「これを被るから大丈夫です。」
手持ちのボブのウィッグを見せると安心したようでバリカンであっという間に刈ってくれた。
カットが終わり、ウィッグを被って店を後を出る。
家に帰ると母親から電話が来て大家さんが家賃はいつでもいいと言ってくれたことを話したら、援助するから即払いなさいと言われ貯金が全くなかった私は母親に甘えることにした。その後、友人からも連絡があり、実家のレストランが人手不足だから手伝ってほしいと言う。
後日、大家さんに家賃を払いに行くと「今日は忙しくて受け取れないわ。」と言われた。
その次の日も「体調が優れないのよ。またね。」と素っ気なく拒否された。
話し好きで家賃を払いに行くと一時間くらいは話す大家さんが、次の日もまた次の日も家賃を受けとってはくれなかった。
「お願いします!今日は家賃を受け取って下さい!」と言って深々と頭を下げた。
「本当に大丈夫?無理しなくていいのよ。」
「受け取って貰えなければ使いそうです。」
「何か悪いわねぇ…」
やっと受け取ってもらえた。
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