日常幸せストーリー 第9話 立ち退き

2020年5月6日日常幸せストーリー,執筆作品

雨がシトシト降る夕方のことだった。

大家さんの娘から立ち退きの話をされた。
「母も亡くなってしまったし建物も古いし、ここは男の人ばかり住んでいるから私怖いのよ。取り壊そうと思うの。」

「敷金は全額返ってくるんですよね?」
「さぁー?部屋を見てみないとわからないわ。」

その言葉に何か突っかかるものがあった。

私がここに入居したときに大家さんは
「長く住んでいたら部屋が傷むのは当たり前。あなたがここを出る時は全額返金しますから。見栄を張って高級マンションとかに引っ越したら駄目よ。ずっとここにいなさい。いっちゃ悪いけどあなたの少ない稼ぎじゃ引っ越しできないわね。」
と言ってくれた事を思い出す。

だけど大家さんはもういない。

近所の行きつけのbarでこの事を話したらマスターや常連さんが色々と教えてくれた。
区役所に区政相談課というところがあり電話予約して弁護士さんに無料で相談できるところがあると聞いて早速、区役所に問い合わせて予約した。

弁護士さんは40代くらいのグレーのスーツをビシッと着た眼鏡をかけたとても真面目そうな人だった。

事の行きさつを話すと
「何を言ってるんだ!この大家は!敷金はもちろん、立ち退き料だって支払うべきだ!どうせ取り壊すんだから部屋の荷物だって置いていっても問題はない!」

いきなり立ち上がり大きな声で話しだし、びっくりしたが自分の事のように怒ってくれてとても嬉しかった。

「書面を書いて、それに著名してもらい印鑑を押して貰いなさい!」
書面の書き方を丁寧に教えてくれた。

次の日、大家さんの娘に
「弁護士さんに聞いたんですが」
と言いかけたところで
「ひぃー、弁護士~!争いたくないのよー。」
と感情的になって部屋の奥に引っ込んでしまった。

後日、母から連絡があり大家の行動にびっくりした。
娘さんの教育がなっていない!と電話ごしに感情的にわめきたてたらしい。

「あの人頭おかしいから立ち退き料はあきらめて、さっさと引っ越しちゃいなさい。」

行きつけのbarで、ここでみなさんに色々教えて貰えたこと、区役所に行って相談したこと、大家に逆ギレされたことなどを話した。

常連さんの中のひとりが
「引っ越し先が決まるまでうちに居候する?そんな大家とひとつ屋根のしたで暮らすのは嫌でしょう?」

そんなお言葉に甘えるのは悪いと断りつつも、後の問いかけに対しては大きく頷いた。

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