超短編ストーリー 第29話 贈り物 前編

2020年5月21日超短編ストーリー,執筆作品

これは家の中での出来事。
「カタカタカタカタカタ、ターン!」それはキーボードを叩く音。
彼は毎日の様にブログを更新し続けていた。今日はいつもより機敏に、そして長時間キーを打ち込んでいた。
「うるさいんだけど」と一緒に住んでいる彼女が痺れを切らして言う。
「え?あ、キーボード?ごめんよー」と言いつつも、その眼はPCに夢中だった。

彼女は苛立っていたがそれは無理の無い事だった。何を隠そう今日は彼女の誕生日。大抵の女の子、いや女性だったら期待するのが普通だろう。それに今まで毎年何かしらプレゼントをくれていたので、今日は朝からそわそわしてはいた。それがどうだ、今日は何処かへ出かける事も無く、ずっと朝からカタカタとキーボードを叩いている。彼一人の世界。彼女のそわそわにすら気付いてない様子。だから彼女が苛立つのは至極当然の事なのであった。

「そのカバンの中から小さいノート取ってくれる?」
「え?」
彼女は少し期待した。
つまりそうやってカバンの中を探らせて実はプレゼントが入っている…
以前やってくれた、そんな感じのシチュエーションを。

しかしカバンの中を探ってもプレゼントらしきものは見当たらなかった。
「無いけど…?」
「入ってるってば。ノートだよ?」
「あぁ、あった」
「ありがとう」
それは本当にただのノートであった。実のところプレゼントを期待した結果から無いと言ってしまった彼女は、小恥ずかしさと少し残念な気持ちが入り交じった複雑な心境となった。

そんな彼女の心境をよそに、彼は言ってのけた。
「あーやっぱ使えないな。良い文句かと思ってたんだけど。実はね、昨日ブログ投稿サイトで自分をフォローしてくれた人が居たんだ。それが嬉しくてね。だから気の効く文句をメモったつもりだったんだけど。全然使えないや、ボツだ。あはは」

そう、これは私から見知らぬあなたへありがとうの思いを込めた話なのであった。

p.s. もちろん彼女のご機嫌が斜めになっていることは言うまでもなく…しようがないので前編と後編に分ける事にした。

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