超短編ストーリー 第30話 贈り物 後編

2020年5月21日超短編ストーリー,執筆作品

「左様ですかぁー」
彼女はご機嫌斜めになってしまった。彼女さんの誕生日だって日に、それは無い。彼は、台所へ行ってしまった彼女を呼んだが、返事がなかった。

気になって台所へと向かったが、彼女は夕食の用意をしてくれていた。
「返事してよー居ないかと思ったよ!」と彼が言った途端に言い返す彼女。
「さっきの君の真似ー。もくもくとパソコン打ってて上の空~」

(やっぱりご機嫌斜め…)

二人は喧嘩する事は殆ど無かった。たとえ喧嘩してもねちっこくはならなかった。

「ごめんね?」
「ムー…。でもいいよ!」
こんな風に喧嘩にはならないのだった。
だがここで余計な事をいうのが彼でもあった。
「でも、怒ってるよねー!?」
「なにが?」
「誕生日なのに何もしてくれないと、怒ってるよね?」
「あー、別にいい。気にする年頃でもないしー」
「怒ってんじゃん」
「もーうるさい怒ってない!」
これ以上言うと本当に喧嘩になるのでやめた。
「眼を瞑って」と彼は彼女の目を後ろから手で覆りながら「こっちきて」とある場所へ誘導した。
「え、何?」

棚のあるところまで歩いた。
「まだだよー。開けちゃだめだよー。」
「うん、大丈夫」
「よーし。オッケーでしょうか?」
「え?」
「プレゼント用意した。見せてオッケーでしょうか?」
「えー!まじ!うん!オッケ~!」

彼は思いっきり【それ】の前に彼女の顔を誘導し手を開けながら言った。
「お誕生日、おめでとう~!」

目を開けた彼女の眼前に広がったのは小さな綺麗な海のジオラマと小さな熱帯魚達だった。
棚の上のこんなところに、誰が存在する未来を予想出来ようか。想像出来ない所を選んだのだから当然なのだが。

綺麗な洒落た水槽、敷き詰めた白い砂利、光に照らされる綺麗な水草を背景に、可愛い綺麗な熱帯魚達が群れをなして生き生きと泳いでいた。

「わぁ~!びっくりした~!凄く綺麗~!可愛い魚!」
驚いたのは全ての魚に名前を付けて覚えていた事だった。
でも彼は彼女のそんなところが好きなようだ。



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