超短編ストーリー 第43話 期待

超短編ストーリー,執筆作品

舞子は都心から少し外れた町に済んでいる30代の女性。
八月中旬の夜七時。彼女はオフィスワークを定時で終えて帰路を歩いていた。

神社では縁日が開かれ、夜見世も並んでいた。
浴衣姿で酒と会話を楽しむ大人達、真剣に金魚すくいをしている子供達。
「あー、楽しそう」
仕事での嫌な事を忘れようと、舞子は少し寄って一人その雰囲気を楽しむことにした。
タイミングが良かったからか、誰も客が居ない夜見世が一軒あった。くじびきだった。
別に興味がなかったので素通りしようとしたが、上半身肌着の主人に話しかけられた。
「そこの綺麗なお姉さん!どうぞ!ハズレないよ!」
「うっそぉ。おいくら?」
値段が別に普通だったので、彼女はあえてひっかかってみた。

「はいじゃぁこの箱の中から一枚引いて!」
箱の中に手を入れて、奥の方の一枚をとった。

「あ、4等ね、4等は…こちら!」

席の下から出してきた1辺10センチメートルくらいの正方形の箱を彼女に渡した。
箱はわざわざ包装されていて中身がわからないようになっていた。
包装の上に4とメモ書きされた紙テープが貼ってあった。
「なんだこれ?」
「開けてからのお楽しみで!まいどあり!」
とりあえずはその箱を鞄の中に入れて、別の店で【焼きトウモロコシ】と【生ビール】を購入し、家に帰った。
自分の部屋はすぐ裏なので別にそれを持ち歩いて帰っても恥ずかしくもなかった。

部屋に帰り、さっと顔を洗って神社の見える窓から祭りの雰囲気を味わいながら【焼きトウモロコシ】で【生ビール】を飲る。
食べ終わる頃に、4等の箱の事を思い出した。

開けると、電池で動くタイマーのようなものが入っていたが、ボタンが一切無く設定ができない事から普通のタイマーでは無いことはわかった。
しかし動いていた。
タイマー自体の外観は悪くはなかった。木の木目が見えていてシックな感じであった。
重さと質感からして、木目塗装というわけではなく、たぶん本当に木なのだろうと思った。
明るく緑色に光る液晶の表示は「99:98」となっていた。
一秒経っても一分経っても表示は変わらなかったが一時間待ってみたら「99:97」となった。
「あと9997時間後に何かが起こるってこと?でも1年以上あるな…」
彼女はそのタイマーのシックな外観が気に入っていて、少し面白い事が置きないかとほんの少しの期待を込めて人形の横に置いた。

そして一年と少し経ち、タイマーが00:01となっていた。何が起こる?1年も待った。彼女は期待した。

1時間後その時は来た。00:00となるはずの数字はデジタル全表示した時の88:88の数字になった。
初期化ボタン等も無いのでつまり壊れたということ。この1年この部屋に置いておいたタイマーは全く意味のないタイマーだった。壊れた事以外それ以外何も起こらない。

彼女はふと、たまに男友達の「今までがんばってきたから今日の賭け事は絶対儲かる」という言葉を思い出した。
そして自分がそのとき決まって言っていた言葉が自分自信に刺さった。
「たぶん当たるとかには、頑張ったとかは多分関係ない」

ブログランキング・にほんブログ村へ