超短編ストーリー 第45話 1階の住人(後編)

超短編ストーリー

朝5時に、玄関の呼び出し音が鳴った。
こんな早朝に何事かと思いながら、インターホンの玄関モニターで外の様子を観てみる。おじいさんが一人立っていた。
まず思った事は老人の徘徊で迷ってしまったのではないかということだった。
一応身構えつつ、ドアをあける。
「早朝すみません」
「どうしましたか?」
「昨日引っ越してきた2階の者なんですが、洗濯機がよくわからなくて。もしよかったら、観ていただきたいのですが」
「はぁ…」
その日の前日は結構な雨だったし、外に出た時引っ越しの作業をみていなく何時もと同じだったので、聞いても半信半疑だった。
つまり老人の徘徊説は消えていなかった。
尚、俺は起きていたので、早朝の訪問自体については、普通はしないと思うが別に責めはしなかった。
「じゃぁちょっとみせて頂いて良いですか?」
言い方がわるいが2階に自分の部屋がある事が本当なのか試させて貰った。
故意にその老人を前にしてついていったが、老人の足取りは迷いなく階段を登り、2階の一番近い部屋の前に来た。
鍵を入れ、ドアを開いてくれ、本当だったことに安堵した。
「洗濯機どこです?」
「こっちの部屋です」
間取りが違うので新鮮だった。洗濯機のところまで案内してくれて、
「なにがわからないですか?」と問うと、
「動かないです。水もでない」とのこと。
洗濯機に繋いである水の蛇口をひねってないからだと見当がついた。蛇口をフル開放してスタート。かくして洗濯機は設定されたコースで動いた。
やったことがなければわからないかもと思った。
俺は老人に、この蛇口はもうそのままで良い事を説明した。
「おぉ!ありがとうございます!」
「いえいえ!動いて良かったです!またなにかありましたら。」
そう言って、俺は自分の家へ戻った。

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